調査・研究
木育・森育楽会の事務局であるNPO法人木づかい子育てネットワークが、令和1年度に実施した「木育の効果」についての研究・調査の一部を掲載します。
●木育の効果に関する有識者検討会議
学校教育、社会教育、生涯学習、企業の営利活動、CSR、市民活動など、木育が幅広く展開される中、その効果とは何か、またそれをどのように評価する方法があるかについて、木育に関わる有識者による検討会議を実施し、木育の効果、ねらい等について検討を進めました。
その他、以下の調査についても掲載してます。
● 学校教育における木育効果の分析 ~小学校における木育実践の効果検証
● 知的障害特別支援学校における生活単元学習における木育の効果
● 企業活動としての木育の推進に関するアンケート調査
なお、学術研究との関係で、その内容を公表できないものがあり、学術雑誌等に掲載後、WEB上で公開する予定です。
林野庁 令和1年度 林業成長産業化総合対策事業
木育効果分析
令和1年度に実施した木育の効果についての研究・調査の一部を掲載します
木育の効果に関する有識者検討会議
- 田口 浩(熊本大学)*委員長
- 寺床 勝也(鹿児島大学)
- 藤元 嘉安(宮崎大学)
- 永冨 一之(大阪教育大学)
- 磯部 征尊(愛知教育大学)
- 浅田 茂裕(埼玉大学)
- 尾崎 士郎(鳴門教育大学)
- 萩嶺 直孝(大分大学)
学校教育、社会教育、生涯学習、企業の営利活動、CSR、市民活動など、木育が幅広く展開される中、その効果とは何か、またそれをどのように評価する方法があるかについて、木育に関わる有識者による検討会議を実施し、木育の効果、ねらい等について検討を進めた。その結果、現在の木育が、学校など教育機関や行政主導で進められる取り組みではなく、企業や市民団体、あるいは林業関係者など生産者自らが行う多様な取り組みとして広がっていること、木育の範囲、定義、目標が明瞭でなく、実施主体がそれぞれのねらいに沿って木育を進めている現状を確認した。そこで、効果測定、検証の視点から「ふれる」、「知る」、「つかう」の3つのフェーズからなる木育の目標構造について検討した。すなわち、木育の定義ではなく、何を実現するための取り組みかを明らかにすることで、現在の多様な木育活動がどのフェーズに位置するものかを特定でき、結果的に効果測定、検証において有効に作用するものと考えられる。なお、木育の定義については無用な論争となることを回避するため今回の検討対象から外した。
学校教育における木育効果の分析 ~小学校における木育実践の効果検証
- 遠藤智史(自由学園)
- 浅田茂裕(埼玉大学)
東京都港区の小学校6校において、5年生社会科の学習として木育の実践を行い、その学習効果について検討した。実践は、環境保全を含む林業の役割、炭素ストックとしての木材の利用の意義、そして実践対象地域である東京都港区における木材利用の取り組みについて扱うものであり、1単位時間で構成した。授業終了後、選択式(理解、意欲)、自由記述式(授業の感想)で構成されるアンケートを実施し、学習効果について検討を試みた。その結果、選択式回答から、本実践とその内容に対して好意的で、積極的に取り組んだことが示唆された。自由記述からは、日本の森林率の高さ、木材生産に必要な年月、身のまわりの木材利用が、多くの児童にとって高い関心、驚きの対象であったことが明らかとなり、森林、木材利用について生活経験的に正しい知識、情報を十分に獲得していないことが示唆された。
知的障害特別支援学校における生活単元学習における木育の効果
- 加藤智子(埼玉大学附属特別支援学校)
- 浅田茂裕(埼玉大学)
S大学附属特別支援学校において、生活単元学習における木工活動を中心とした木育の実践を行い、知的障害を持つ生徒にとっての木育の価値と意義について検討した。実践は、3年間で段階的に進める「働く学習」の一環とし、仕事を疑似的に体験するものであり、木工活動は商品開発を中心に行った。
本実践から、木工活動は自己有用感や達成感の獲得や、他者との関わる活動を加えることで、協働の必要性の理解、他者との関係づくりなどにも有効であることが示唆された。また、こうした効果は、木材の持つ軽軟さ、加工性の良さ、材料のもつにおいや肌触りなどの感性的特徴、木工活動の持つ1つ1つの作業の完結性、製作した作品のもつ実用性等によってもたらされるものと考えられた。
企業活動としての木育の推進に関するアンケート調査
- 浅田茂裕(埼玉大学)
- 酒井慶太郎(酒井産業株式会社)
企業活動としての木育が企業の生産活動に及ぼす影響を明らかにするために、企業の木育への取り組み状況と推進による効果、課題についてアンケートを実施した。調査は全国木育生産者協議会加盟のうち木材を扱う企業を対象とし、製造業、卸売業などの計39法人が回答し、その約半数が何らかの形で木育に取り組み、1/4が現在検討中であった。調査の結果、企業が取り組む木育が、学校への教育支援などよりも、製品開発、販売として取り組む例が多いことがわかった。また、木育の推進に否定的な企業は少なく、新規取引先の増加、事業内容の多角化、売り上げ・利益の増加など、肯定的な効果を実感していることがうかがえた。木育推進上の課題としては、新商品・サービスの企画開発、新たな販売・受注先の開拓、人材の確保・育成であった。
その他の調査・研究
- ・幼児教育段階における木育実践の効果についてのヒアリング調査
- ・大学生の木に対するイメージと木育受講後のイメージについて
- ・木育・森育 近畿フォーラムの活動事例について
- ・幼児教育における木育の環境構成